陶磁器の材質・装飾・文様について
陶磁器の材質の特徴や、和食器の伝統的な装飾技法や文様について解説します。
陶磁器の材質
陶器と磁器には以下のような違いがあります。食器を選ぶ際の参考にしてみて下さい。
- | 陶器(とうき) | 磁器(じき) |
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焼成温度 | 低(1200度前後) | 高(1300度前後) |
色 | 有色が多い | 白色が多い |
主原料 | 陶土(粘土) | 陶石を粉砕した粉 |
指ではじいた時の音 | 濁音、低い音 | 高い音 |
吸水性 | 多い | 少ない |
透光性 | ほとんどなし | 少しあり |
その他 |
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陶磁器の装飾技法
装飾は、釉薬による表面装飾の他に、素地そのものに施す装飾があります。装飾の技法名は食器の名前の一部になっていることも多いので、ぜひ器選びのヒント参考にしてみてはいかがでしょうか。
装飾技法 | 参考画像 | 方法 |
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印花 (いんか) |
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模様を彫った印を乾燥前の素地にスタンプのように押し付けます。同じ模様を連続して装飾することができます。 |
透し彫り (すかしぼり) |
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素地を釘やキリで彫ったり、切り抜いたりして、残った部分で模様をつくる技法です。 |
蛍手 (ほたるで) |
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透し彫りの空間に透明釉をかけて焼成します。光をかざすと透かし彫りのところが透き通って見えます。 |
布目 (ぬのめ) |
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表面に布を押しつけて布目模様を写し取る方法です。もともとは型と陶土を離れやすくするため布を挟んでいましたが、現在は装飾技法の一つとしても使われています。 |
たたき | ![]() |
器の内側に板をあて、外側から板で叩き締めて成形します。叩き締めるため、軽くて丈夫な器ができます。 |
練り込み (ねりこみ) |
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異なる色の陶土を組合せて模様を作ります。いろいろな粘土をどのように組み合わせるかで、様々な模様を作り出すこともできます。 |
掻き落とし (かきおとし) |
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素地に化粧土を掛けた後、その化粧土を削り落として模様を描きます。削り落とした部分は素地の色の模様が浮かびます。 |
象嵌 (ぞうがん) |
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素地が柔らかいうちに、印等で付けた凹の部分や掻き落としの部分に異なる色をはめ込み、透明釉を掛けます。象は「かたどる」、嵌は「はめる」の意味があります。 |
刷毛目 (はけめ) |
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化粧土を刷毛で塗ります。刷毛の種類や、塗り跡によって、さまざまな模様に仕上がります。 |
飛鉋 (とびかんな) |
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薄い刃先のカンナでロクロ上の器を連続して削ります。信楽ではトチリとも呼ばれています。 |
一珍 (いっちん) |
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泥のように柔らかい化粧土をチューブで針先から絞り出して模様を描きます。 |
粉引 (こひき) |
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素地を白化粧で覆い、更に透明釉を掛けます。ぽってりと白い粉を引いたような印象になります。 |
貫入 (かんにゅう) |
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陶磁器が焼きあがった後、冷ました際に釉薬の表面に入るひびのような模様です。ガラス質の釉薬に入る貫入は光と合わさって美しい表情を見せてくれます。 |
陶磁器の絵柄・文様
日本の伝統的な絵柄や文様(模様)は食器・陶磁器にも古くから利用されています。いつも何気なく見ている食器の柄ですが、名前や由来をよく知ると、縁起をかついだり、様々な願いが込められていることが分かります。
絵柄や文様 | 参考画像 | 意味合いなど |
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唐草 (からくさ) |
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生命力の強いツタが無限に伸び続け、絡み合う様子を唐草模様といいます。繁栄や長寿を連想させ、縁起が良い模様とされます。たこ唐草、つる唐草、花唐草、波唐草など様々な種類があります。 |
青海波 (せいがいは) |
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半円を重ねて無限に広がる波や鱗を表す吉祥文です。 |
七宝 (しっぽう) |
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仏教の七宝を表し、円は円満を、総じて富貴と子孫繁栄を表します。 |
麻 (あさ) |
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麻は生命力の強い植物として知られています。産着の柄としても有名ですね。 |
十草 (とくさ) |
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天に向かい真っ直ぐに伸びる十草から成長や繁栄を表します。 |
流水 (りゅうすい) |
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苦難や災いを流す、お浄めの意味合いがあります。 |
網 (あみ) |
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幸福をすくい取る網です。 |
祥瑞 (しょんずい) |
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景徳鎮にルーツがあるとされ、染付の最上柄とされています。 |
赤絵 (あかえ) |
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多色の上絵の中でも赤を多用することから色絵を赤絵と呼びます。 |
笹 (ささ) |
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竹同様、縁起柄とされています。 |
すすき | ![]() |
古代万葉の時代より魔よけの植物とされています。 |
市松 (いちまつ) |
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途切れなく続く模様は永遠、繁栄を意味します。 |
菊割 (きくわり) |
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菊の花をモチーフに菊の花弁のような形に仕上げます。 |
紅葉 (もみじ) |
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季節によりその色を変え、人に感動をもたらします。 |
千鳥 (ちどり) |
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千鳥=千取り、すなわち勝利を表します。 |
武蔵野 (むさしの) |
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秋草が一面に茂る武蔵野の風景に叙情性を表現しています。 |
鳳凰 (ほうおう) |
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天下太平を見通す霊鳥。知恵と道徳のシンボルでもあります。 |